『社内探偵』は、2021年現在ネットでは、20巻まで配信されています。
人事部の ”なんでも相談室” 担当の久我ありさに寄せられた相談は、自分勝手な勤務態度で、同僚の女子社員を振り回す飯田美和の処遇について。
この件をきっかけに久我ありさは、社内上層部の不正が見え隠れする思わぬ事態に巻き込まれていく。
この作品は、巻を重ねるごとにミステリー要素が深まり、先の展開が気になってくる構成になっています。
ですから、お騒がせキャラが成敗される勧善懲悪的なストーリーを期待される方は、方向性の違いを感じるかもしれません。
でも、登場人物一人一人に注目すると、様々な角度から読める作品でもあるのです。
キャラクター設定がとても練れていて、どの登場人物も ”実際にいそうなリアルさ” と ”人間味あふれるクセの強さ” を持ち、生き生きとした存在感を放っているので、人物に注目することで、色々な読み方ができるのです。
例えば、三屋部長に注目すれば、 ”人の裏の顔を見極めて真実を追求するミステリー” として読むことができますし、飯田美和に注目すれば、 ”自分勝手なお騒がせ社員の成長物語” として読むこともできます。
また、主人公・久我ありさに注目すれば、「正義感の行使は自己満足に過ぎないのか」といった ”テーマを追求する物語” として読むこともできるのです。
つまり、たとえ軽い気持ちで読み始めたとしても、作品が持つ多面的な魅力にいつのまにか引き付けられ、最後まで見届けたくなるのです。
実に不思議な吸引力を持つ作品です。
なかでも一番注目してもらいたいのが、主人公・久我ありさが見せる心の揺れです。
ありさの心の揺れとは、彼女自身、社内の働きやすさのためになると信じてやってきた不正調査が、正義感などではなく、自分の価値観を優先したいだけのただの自己満足に過ぎないのではないか、と心が揺らぐ場面があるのです。
ありさのこの心情の揺れが物語を読みごたえのあるものにしていて、それ以降の彼女の覚悟と行動力につながります。
一見、軽い世界観で、オフィスでのトラブル解決物といった展開で始まるこの作品ですが、いつの間にかミステリーの様相を呈してきて、どんどん物語に引き込まれていきます。
意外性を求める方におすすめの作品です。
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《まんが王国》
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