『生者の行進』は、ネットでは2018年11月に完結していますが、未だに根強い人気を誇る作品です。
弟を亡くして以来、霊が見えるようになった泪(るい)。
ある日を境に、幼馴染・まどかに憑いた霊が死をもたらす悪霊だとわかる。
悪霊が示した死までの猶予はわずか6日。
「まどかを守りたい。」泪(るい)は、固く決意するのだが‥‥。
『生者の行進』のここがすごい
この作品の幾つもの魅力の中から、どうしても言いたい2つのすごい点を紹介します。
まずひとつは何と言っても、生き生きとした存在感を持つ登場人物たちです。
その存在感があまりにも自然なことに驚かされます。
そしてもうひとつは、よく練られた構成です。
派手な展開や、大掛かりなどんでん返しがあるわけではないのに、心に深く残るわけは、構成が見事だからです。
そんなわけで今回は、登場人物たちの魅力と構成の魅力について少しお話します。
登場人物たちの魅力
主要キャラクターたちを少し紹介します。
泪‥‥正直で率直。いじめられっ子だったが、心の底にブレない優しさと強さを持つ。
まどか‥‥見た目は可愛いが、男勝りで活発。でも、純でナイーブな面を持つ。
東雲(しののめ)刑事‥‥美人でクールだが、繊細な優しさも併せ持つ。一途な情熱を心に秘めている。
これら主要キャラクターたちの人物像が、何気ない会話のやりとりから自然に見えてきます。
それば本当に自然で、作られたキャラクターと言うより、実在の人物といった印象を受けるほどです。
人物像が判断しやすくなる特別な展開があるわけではないのに、彼らの人となりがはっきり見えてくるから不思議です。
そのおかげで、他の漫画では味わえない臨場感が味わえるのです。
また、人物像の背景となる生活環境や過去の経験なども、ストーリの基本軸を損なわない程度に描かれていて、人物像にさらに厚みを与えています。
実に見事なキャラクター設定です。
構成の魅力
まず一番強調しておきたいことは、単純な勧善懲悪の構成ではないということです
ですから、”爽快な読後感” や ”晴れやかな気分” は味わえません。
でも、心に深く訴えるものがあるのです。
これは綿密に練られた、次のような構成の見事さによるものです。
ストーリの基本軸は、主人公・泪(るい)が、悪霊にとりつかれた幼馴染・まどかを助けるために奮闘するというものです。
ここに次の2つの問題が関わってくるのです。
- 主人公・泪が抱えている心の問題。
- 殺人犯が抱えている心の問題。
これら二人の心の問題は、悪霊との関わりを通して、最後には正反対の結末を迎えるのです。
これに加えて、次の2つの事情も関わってくるのです。
- 東雲(しののめ)刑事やまどかや被害者たち(成仏できない霊) が抱える事情。
- 泪の家族が抱える事情。
これらの事情が全て繋がり、この上ない見事な結末へと導かれるのです。
この漫画は、極力ネタバレしたくないので、具体的な展開については話しませんが、まだご存じない方はぜひ、ご自分の目で確かめてみてください。
まとめ
『生者の行進』の数ある魅力の中で、今回は次の2つを紹介しました。
1.イキイキとした存在感を放つ登場人物たち。
2.下記の三者が、一つの結末に収束していく構成の見事さ。
- 心の悩みを抱えた、生きている人間。
- 生きている人間の負の感情の産物である悪霊。
- 成仏できない霊。
『生者の行進』は、単なるホラー漫画の枠を超えた、人の心に強く訴える力を持つヒューマン・ドラマです。
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