ROUTE END ルートエンドの考察 =その面白さの理由とつまらなさの理由について=

霧のかかった山 ヒューマンドラマ

春野太慈(はるのたじ)。

職業、特殊清掃業。(殺人、自殺、孤独死などで遺体が放置された部屋を清掃、復元する仕事)

それは、10歳の時、母親に自殺された彼が、死なないために選んだの仕事。

そんな彼が、身近で起こった猟奇的連続殺人事件(END事件)に巻き込まれ、予想もしなかった絶望に見舞われる。

『ROUTE END』は、2022年現在ネットでは、8巻まで配信され完結しています。

ROUTE END を読むときの注意点 面白さの理由とつまらなさの理由

これは重要なことなので、まず最初にお話しておきます。


この作品は、”犯人推理の謎解きの面白さ” を期待して読み始める方が多いかと思いますが、ミステリーとして読むと、肩透かしを食らいます。


そこまでがっかりしないにしても、論理的な解釈がしにくい謎が残り、モヤモヤした気分を味わうかもしれません。


なぜなら、ある人物の存在そのものが、論理的な推理の邪魔をしているからなのです。


ですからこの作品は、純粋に人間ドラマとして読むことをおすすめします。


すると、読み応えのある重厚なヒューマンドラマとしての側面が現れてきます。


この事実を踏まえた上で今回は、「ROUTE END」の見どころを2つ紹介します。

ROUTE END の見どころ

この作品の特徴はなんといっても、登場人物たちの存在そのものが、読者に様々なことを考えさせる点にあります。

そして見どころは、心に闇を抱えた登場人物たちの「死との向き合い方」と、「重苦しい世界観」です。

登場人物たちの「死との向き合い方」

この物語では、3つのタイプに分類できる登場人物たちが、複雑に絡み合い、最終的には自らの手で人生を切り開いていく者もいれば、破滅していく者もいます。


読者は緊張感に包まれながら、「死との向き合い方」について深く考えされられるのです。


3つのタイプとは、

  1. 身近な人に自殺された者
  2. 人を自殺させようとする者
  3. 現実を超越した者

1.の身近な人に自殺された者は、さらに3つに分類できます

  1. 「死」をめぐって、自分との対話を続けた者
  2. 吹っ切れて、現実を受け入れた者
  3. 心の安定のため、死体を弄ぶことに依存した者

1.は、主人公・春野太慈です。

そして、3. が、END事件の犯人です


春野太慈の「死との向き合い方」が、全編を通して軸になっているので、彼の背景を少し紹介します。

10歳のときに母親に自殺された太慈は、自分が母親の生きる理由になれなかったことに深く傷つきます。

日常的に死を感じられる仕事だけが、唯一やる気になれる仕事だと感じた太慈は、特殊清掃業を選びます。

太慈は、面接の時、こう告白しています。

「こういう仕事じゃないと…やる気になれないんです」

自殺願望のあった太慈は、「」から無理に離れようとすると、逆に「」を強く意識してしまうのです。

ですから太慈は、「」に寄り添う仕事につくことで「死」と向かい合い、生きることを選んだのです。


他の登場人物たちも、死に対してどう向き合っているかに注目しながら読むと、物語の深みが味わえますよ。

悲しくて重苦しい世界観

この作品には、言いようのない悲しさ重苦しさを常に感じます。


でもそれは、人間に対する深い共感と愛に支えられているので、決して後味の悪いものとしては残りません。


この悲しさ重苦しさは、作画が醸し出す雰囲気にも支えられています。


”静的な構図” や ”必要最小限のコマ割り” が、この雰囲気を作っているのです。


人物は、”最小限の動き” と ”単純な表情” で描かれているだけですが、これが「重苦しい世界観」を端的に実現しているのです。


まさに、必要最小限の材料で、最大の効果を上げている、典型的な作画です。


一見物足りなさを感じる表現ですが、作品の世界観を支える絶妙さには眼を見張るものがあります。

まとめ  ROUTE END をおすすめする理由

ROUTE END』は一言でいうと、人の心に深く残る名作です。


ただしミステリーとしてではありません。


「死との向き合い方」を問うヒューマンドラマとしてです。


読み直すたびに新しい発見があり、


読み直すたびに考えさせられる、魅力の尽きない名作なのです。


”ダークな世界観” がお好きな方、”心に残る作品” をお探しの方に、強くおすすめします。


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