児童相談所に勤める夏目アラタは、バラバラ殺人事件の被害者の息子・卓斗から、ある依頼を受ける。
それは、いまだに見つからない、父親の首のありかを犯人から聞き出すこと。
アラタは卓斗を危険から遠ざけるため、「品川ピエロ」こと、死刑囚・品川真珠(しながわ まじゅ)と直接会う決心をする。
先の見えない展開にグイグイ引き込まれる『夏目アラタの結婚』。
その魅力の秘密を紹介します。
『夏目アラタの結婚』の魅力の秘密
今回は、漫画を成り立たせている中心要素、「構成」と「キャラクター」に焦点を当てて、この作品の魅力に迫ります。
キャラクターの魅力
特に注目してもらいたいのが、品川真珠。
女性の連続殺人犯というキャラクター設定は、今ではそう珍しくはありませんが、この作品に登場する真珠はかなりのくせ者です。
「底知れなさの塊」みたいな存在です。
ただひたすら殺人を楽しむ、人間離れした化け物なのか。
人格形成過程で何らかの問題を抱えた、人格破綻者なのか。
自らの世界を保つだけのために人を殺し続けた、サイコパスなのか。
素顔がなかなか見えてこない真珠に、男たちは翻弄されていきます。
このように、一番登場するキャラクターでありながら、真実の姿がなかなか見えてこないという人物設定は、この作品から目が離せなくなる秘密のひとつです。
構成の魅力
この物語は、アラタと真珠の関係を軸に、徐々に事件の真相が明らかになる、という全体構成になっています。
アラタと真珠の交流の主な舞台は、面会室という密室です。
最大の見どころは、アラタと真珠のアクリル板越しの心理戦です。
ここで繰り広げられる、二人の「腹のさぐり合い」や「駆け引き」が物語の展開に大きく関わってきます。
新しい展開は全て、ここからはじまるのです。
また、アラタが解こうとしている「事件の真相」は、真珠に関わる謎(彼女の本心や素顔)と大きく関わっているため、真珠の人間性が理解できなければ、「事件の真相」には近づけない、という構成になっているのです。
そして、真珠の人間性が深く掘り下げられていけば行くほど、事件の闇に少しずつ光があたってくるのです。
このように、「真珠の素顔がわかって初めて、事件の真相も明らかになる」という単純な構成が、この物語を単純でありながらも深く読みごたえのあるものにしています。
まとめ
本作の「キャラクター」の魅力は、なんと言っても秘密に包まれた品川真珠に代表されます。
彼女の存在は、「底知れない存在の魅力」というものを見事に体現しています。
「構成」に関しては、読者の興味が真珠の ”素顔の解明” に向けられているうちに、必然的に ”事件の真相” も見えてくる、という単純な構成になっています。
この「全体の構成のブレない単純さ」がベースにあるため、読者は、自然と無理なく物語に引き込まれていくのです。
実に見事な構成力です。
これに関しては、実際に漫画を体験してもらうしかありません。
すべての方におすすめしたい作品です。
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