元風俗嬢、ちひろさんが働くのは、海辺の小さなお弁当屋「のこのこ弁当」。
弁当はもちろん美味しいけれど、お客の目当てはちひろさん。
ある者には、辛辣な事実を突きつけ、またある者には、優しさと勇気を与えるちひろさん。
そんなちひろさんに、生きづらさを抱えた人たちはいつの間にか救われるのです。
あなたは人間関係に疲れたとき、心を軽くしたいときに、どうしていますか。
『ちひろさん』は、そんなときにおすすめの作品なんです。
一話完結型のエピソードを読み進めていくうちに、いつの間にか自己肯定感が高まってくるんです。
今回は、その秘密を紹介します。
『ちひろさん』のここがすごい
この作品のすごい点は、なんと言っても主人公・ちひろの人物設定と、深いテーマと、シンプルな作画です。
今回はこの3つについてお話します。
主人公・ちひろの秀逸な人物設定がすごい
- 人は他人との交わりなしに生きることは出来ない、でも時には、人間関係から自由になって孤独になることも必要。
- 自分の価値観は他人とは共感し合えないからと言って、自分の価値観を捨てる必要はない。無理に人に合わせなくてもいい。
これが、主人公・ちひろの基本スタンスです。
ちひろは、元風俗嬢という過去も、特に隠そうとはしません。
自分が周りからどう見られているかも、特に気にしません。
彼女はあるがままに、自分に素直に、日々を生きているのです。
実に清々しくもたくましい女性なのですが、時折垣間見せる ”やるせない孤独感” に胸を打たれます。
強さと、優しさと、脆さが入り混じった、実に人間臭い魅力に溢れる人物なのです。
彼女の言動を見ていると、知らないうちに勇気をもらえますよ。
身近で深いテーマがすごい
生きづらさを感じている人の悩みは、ほとんどが人間関係からきているはずです。
誰もが次のようなことを考えたことがあるのではないでしょうか。
- ”人と比べるから悩みが生まれる” とわかっていても、そこから抜け出せない。
- ”世間の価値観に縛られずに、自分なりの解釈でやっていけばいい” とは言いながらも、孤独になるのが怖い。
でも、この作品を読み進めていくと、こんな気持も自然と薄れていくのです。
「自分もちひろのように、自分で自分の生き方を選択できるはずだ」と自然に思えてくるのです。
実はこの作品、”生きづらさとどう向き合うか” がテーマなのです。
ポイントは、”正直で素直な自分の感覚を、どこまで貫けるか” です。
何かに悩んだとき、その解決方法は大抵の場合、皆わかっているはずです。
問題は、そこから目をそらしてしまうこと。
ちひろは、裸の感覚を飲み込む覚悟があるかどうかが大事だといいます。
彼女は時々人間関係を脱ぎ捨てて、孤独に浸りながら、裸の感覚を飲み込み続けているのです。
そんな彼女の姿に、誰もが知らないうちに勇気をもらうはずです。
シンプルな作画の表現力がすごい
何度見ても飽きない、抜群の表現力にもぜひ注目してもらいたいのです。
ギリギリまで切り詰められた数本のシンプル極まりない線で、緊張感あふれる充実した画面を作り上げている表現力が、実に見事なんです。
この作品の作画の特徴をいくつか挙げてみます
- 生き生きとした存在感を感じさせる、感覚に訴える線。
- 複雑で微妙な感情表現を実現した線。
- 爽やかな風を感じさせる線。
- 言葉にならない感覚にあふれた、目の表現。
すべての線が、説明的なものではなく、表現になっているのです。
この作品が、何度読んでも飽きない理由は、作画の素晴らしさにあります。
ちょうど小説の文体を味わうような感覚で、作画そのものを味わうことができるのです。
こればかりは実際に見てもらうしかありませんので、是非本編で確かめてみてください。
最高に一言
最後に一言断っておきたいことがあります。
『ちひろさん』は、人生の辛酸をなめてきた女性が上から目線で、達観した人生論を語ってくるような、押し付けがましいいやらしさは、かけらもありません。
なぜなら、ちひろは決して人を否定しないからです。
彼女はいわば、価値観を超越したような存在なのです。
一種空虚な存在感を放つ彼女の言葉や行動は、相手を問わず、すっと心に入ってくるのです。
心を軽くしたいときに必ず読み返したくなる、珠玉の作品です。
『ちひろさん』をすぐに読んでみたい方は、こちらのサイトをおすすめします。いつも試し読みが出来ますよ。
《まんが王国》
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