久能 整(くのう ととのう)は難解な事件の謎解きに特別な嗜好をよせる、よくありがちな、くせの強い探偵などではありません。
彼はただ、客観的に分析したことを淡々と話すだけ。
それがいつの間にか、事件の謎を解いてしまうのです。
解くのはそれだけではありません。
人の悩みも、いつの間にか解きほぐしてしまうのです。
『ミステリと言う勿れ』は、事件は起きるのですが、題名にもある通り、その本筋は事件の謎解きではなく、久能 整(くのう ととのう)のお喋りです。
今回は、整のお喋りがなぜこんなにも魅力的なのかについて紹介します。
『ミステリと言う勿れ』は、主人公・整のお喋りでできている
この作品は、”事件が起きて、なぜか整が巻き込まれて、知らぬ間に整が解決してしまう” という構成になっています。
でも実は、謎解きを楽しむための物語ではなく、整のおしゃべりを楽しむための物語なんです。
整のお喋りの魅力
整は、”事実は一つ、真実は人の数だけ存在する”と考えています。
ですから彼が物を考える時、必ず事実と真実(私見)をしっかり分けて考えます。
整は、真実は私見に過ぎないと考えているのです。
これはかなり重要なポイントです。
もしも、真実は私見に過ぎないことを忘れて自分の主張する真実(私見)を事実と思い込んだりしたら、自分の意図が相手に伝わらないどころか、相手との争いに発展しかねません。
各々が事実を話し合っているつもりでも、実は私見を話し合っているに過ぎなげれば、お互いにわかり合うことは難しいでしょう。
世間の言い争いのほどんどは、ここに原因があるかもしれません。
整はこの点よくわきまえていて、殺人容疑をかけられた時に、見事に事実と真実(刑事の私見・思い込み)を分けて捉え直して、身の潔白を証明したのです。
この、”事実は一つ、真実は人の数だけ存在する”という考えは、整のお喋りの魅力のベースになっています。
整は、ただ客観的に事実と真実(私見)をしっかり分けて喋るだけなのですが、それが彼のお喋りの魅力につながるのです。
話の内容の魅力はさることながら、相手と決して争わない魅力、相手を決して言い負かさない魅力につながるのです。
しかも、事実を話す時は客観的に、真実(私見)を話す時は礼儀正しく。
そんな整の態度に、周りの者達は、彼の話に耳を傾けたくなり、自然に説得され、最後には魅了されるのです。
整のお喋りは、実に魅力的です。
最後にひとこと
整のお喋りは、独りよがりなところがなく、説教じみてもいません。
”自分の頭で考えて、考えて、その結果を誰かにただ話す” というスタイルです。
そこには、”相手をやり込める意図” もなければ、”これ見よがしな態度” もありません。
彼はただ、客観的に分析したことを淡々と話すだけです。
そのお喋りはまるで、整の存在証明のようなものです。
僕は彼のお喋りをずっと聞いていたいと思いました。
一人の主人公のお喋りに、これほどまでに惹きつけられる『ミステリと言う勿れ』。
何度読み直しても、いつも新しい発見がある『ミステリと言う勿れ』。
まぎれもない傑作です。
すべての方におすすめします。
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