優里(生者)のもとに突然現れた青野くん(死者)。
生者と死者は、二度と触れ合うことができないはず。
でも、優里の青野くんに対する執着心がそのタブーを破ってしまいそう。
一方、ときどき現れる黒青野。
その真の意図もわからぬまま、優里は黒青野に翻弄されていき……。
純粋で一途な想いが行き過ぎると、自己中心的な偏愛に陥りがちなもの。
この物語の主人公・優里は、幽霊になった青野くんに遭遇したとき、「純愛のためなら死をもいとわない」というような、怖れと憧れが入り混じった表情を浮かべます。
この優里の行き過ぎた一途さが、この物語のすべての始まりなのです。
今回は、この作品のテーマのひとつである「愛のかたち」を紹介します。
『青野くんに触りたいから死にたい』は「愛のかたち」をめぐる物語
ホラー要素の強いこの作品ですが、読み応えのある深い物語になっています。
その理由は、愛に関するテーマが物語の根底に存在するからです。
「お互いに、相手を自分のものにしようとする愛」から、「お互いに、相手を支え合う愛」に至るまで、愛には様々な ”かたち” や ”レベル” があると思いますが、この作品に出てくるのは、「自己犠牲を伴う愛」です。
『青野くんに触りたいから死にたい』は ”自己犠牲を伴う愛” の克服がテーマ
優里の行動を通して問われているのが、この「自己犠牲を伴う愛」です。
「相手のためなら死んでも構わない」というたぐいの愛は、それが、相手が一番悲しむことだとすら気づいていない愚かなエゴです。
優里は何度か、この過ちを犯します。
次のようなときでした。
・仲間の命を助けるため、自分を犠牲にして黒青野に瞳を捧げたとき。
・黒青野の求めるまま、自分の体を傷つけることを許したとき。
この時優里は、青野くんの優里に対する ”愛” や ”意思” を完全に無視したのです。
後に優里は、このことを死ぬほど後悔することになります。
愛をめぐる優里の成長
「自己犠牲を伴う愛」は、相手を自分のものにしようとする ”利己的な感覚” が源だと考えられます。
結局は、相手のことを考えない自己愛と言えます。
優里はこれを徐々に克服していきます。
この展開が、まさにこの作品の大きな見どころになっています。
優里が目指した愛は、相手を支えるという利他的な愛です。
これを可能にしたのが、優里が本来持っている、”自分を深く反省する素直さ” と ”心から人を受け入れる優しさ” です。
まとめ
「情念に左右される愛」がテーマなら、ドラマチックな展開で読者の興味を引くことはできても、しょせんは三文芝居で終わるのがおちです。
人の心に深い印象を残すことはありません。
でも、『青野くんに触りたいから死にたい』は一味違います。
「行き過ぎた純粋さ」と「執着心」を持つ主人公・優里が、その感覚に溺れることなく、自分自身を成長させていく過程が丁寧に描かれていくのです。
それも極めて自然にです。
この作品の凄さは、実際に読んでもらうのが一番です。
ぜひあなたの目で確かめてみてください。
心から、すべての方におすすめします。
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