この作品は、『善悪の屑』の続編で、復讐代行人・カモの過去が明かされます。
凶悪犯罪の被害者や遺族の無念を晴らす、復讐代行人・カモとトラ。
これまでいくつもの依頼を受けてきたカモとトラだが、決して心が晴れることはない。
復讐の先にあるものは何か。犯罪被害者たちの無念は本当に晴れるのか。
もしも犯罪被害者になったとしたら、誰もが持つであろう復讐心。
その心の闇を真正面から描いた骨太の作品です。
『外道の歌』の深いテーマ
この作品のテーマは、「犯罪被害者の生き方」です。
犯罪被害者たちが次の2つをどう解釈するかを巡って、物語が展開していきます。
・善、悪、正義の基準
・復讐の正当性
今回は、『外道の歌』の中心テーマであるこの2つについて紹介します。
善、悪、正義とは何か
この作品は、次の視点を大事にしています。
・凶悪犯罪の被害者や遺族にとって、復讐代行人=善。
・復讐代行人に殺された犯罪加害者の遺族にとって、復讐代行人=悪。
つまりこの物語は、「立場が変われば、ものの見方も変わる」という事実をとても大切にしているのです。
また、”正義は人の数だけ存在する” という立場から、自分にとっての正義を貫くことの正当性についても、慎重に扱われています。
これが、この作品が持つ深さの理由です。
復讐の正当性
この作品は、単純な勧善懲悪の物語ではありません。
復讐を正当化する物語でもありません。
「犯罪被害者の生き方」の一つを提示した物語です。
このことは、復讐代行業を始めるときのカモの覚悟から伺えます。
復讐が悪の所業であることは、カモにとってわかりきったことなのです。
復讐は必ず連鎖を生みます。
だから、「復讐は、自分のような外道な人間にしかできない」という覚悟が、カモにはあるのです。
主人公のこの自覚が、物語をさらに深いものにしています。
このことが一番良くわかるのが第1話~第5話です。
『外道の歌』全編を通して、一番の見どころとも言える、カモが復讐代行業を始めるきっかけになった事件を描いています。
第1話~第5話は、「最小限のコマで、最大の効果を上げるという」マンガ特有の表現効果が見事に発揮された、素晴らしいエピソードです。
4年前の回想が始まる冒頭から、回想の最後でカモがサングラスをかけるシーンまで。
「カモの目の表情」を追ってみてください。
平穏な生活を送っていたカモが、復讐代行業を始めるまでの「心情の変化」が見事に表現されています。
この作品の肝は何と言っても、主人公・カモの魅力に尽きます。
その人物設定は緻密を極めていて、同ジャンルの他の作品の追随を許すものではありません。
この点に興味のある方は、下記の記事をご覧ください。
まとめ
この作品は、「善、悪、正義は立場が違えば変わる」と云う視点から描かれています。
また、「復讐の先に救いがあるわけではない」という視点もあります。
ですから、読後感は爽快ではありません。
”やりきれない気持ち” や ”切なさ” がいつまでも残るので、すべての方にはおすすめできませんが、心に深く残る物語です。
『外道の歌』が気になる方、すぐに読んでみたい方は、こちらのサイトをチェックしてみてください。
《まんが王国》
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