凶悪犯罪の被害者や遺族が無念を晴らすために訪れる場所。
「カモメ古書店」
店主のカモと相方のトラは、これまでいくつもの依頼を受けてきた。
復讐の先に救いがあるわけではない。
だが、カモとトラは今日も、被害者の声に耳を傾ける。
復讐を題材にしたこの作品。
全編に独特の雰囲気が漂います。
今回は、その秘密を探ります。
『外道の歌』の絵の魅力
この作品の一番の醍醐味は、絵による繊細な表現が味わえる点です。
ストーリ展開だけでなく、絵の力にも是非注目してもらいたいのです。
感覚に訴える絵の力
注目すべきは、「絵で説明する」というよりも、「絵で感じさせる」という表現力の高さです。
例えば、登場人物の表情。
パターン化された表現ではなく、複雑で微妙な感情が感じられる表現なのです。
まさに、言葉では説明しにくい感情が、絵を通して感覚的に伝わってくるのです。
また、登場人物の心情の変化も、目の表情をしばらく追うだけで読み取ることができます。
実に繊細で、説得力のある絵です。
独特の世界観を支える絵の力
全編を通じて散りばめられた日常風景にも秘密があります。
カモとトラの住む世界は、人の世界から足を踏み外したものだけが生きる、復讐という闇の世界。
普通の人間が住む世界とは決して相容れない世界です。
ところが読者が目にするのは、なんの変哲もない日常の風景。
でもこの日常風景が、言葉に出来ない独特の世界観を作っているのです。
その秘密は、執拗なまでに繊細に描かれた表現にあります。
この違和感を感じさせるほどの繊細な表現が、なんの変哲もない風景を、
「闇の世界の住人の目に映る風景」と感じさせるのです。
この風景を眺めていると、目に映るものの存在意義が消えてしまったような感覚に襲われます。
日常的なノイズが消えた、凍りついた世界を感じます。
この独特の感覚は、実際に漫画を体験してもらうしかありません。
もちろんこれは、僕の個人的な感覚です。
あなたなら、もっと違った発見をされるかもしれません。
まとめ
絵で説明する漫画が多い中で、絵で感じさせる漫画は、とても貴重です。
ストーリ展開の面白さもさることながら、人の感覚に強く訴える力を持つ『外道の歌』は、
まさに、漫画ならではの醍醐味が味わえる傑作です。
”晴れやかな読後感” や、”爽やかな気分” が味わえるわけではないのですが、僕にとっては忘れられない作品です。
『外道の歌』が気になる方、すぐに読んでみたい方は、僕がいつも利用している電子コミックサイト「まんが王国」をおすすめします。 こちらからどうぞ。
*外道のと検索してくださいね。
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