死刑囚・真珠と、児童相談所職員・アラタとの間で繰り広げられる、被害者の遺体のありかをめぐる攻防が続く。
彼女の気を引くために思わず口から出た、「俺と、結婚しようぜ !!」
このことばをきっかけに、二人の駆け引きが始まる。
”先の見えない展開”や、”見えそうで見えない真珠の真実の姿” が気になり、引き込まれずにはいられない作品です。
心理ドラマとしての側面が目立つ作品ですが、今回は「テーマ」に焦点を当ててその魅力を探ります。
『夏目アラタの結婚』のテーマとは
この作品は、「人間の存在意義」をテーマにしています。
死刑囚・真珠は、己の存在意義を巡って、心に深い闇を抱えた者として登場します。
具体的に彼女の過去に何があったかはネタバレになってしまうので明かせませんが、死刑囚・真珠に関する全ての仮説や推理が根底からくつがえる驚愕の出来事とだけ言っておきます。
この、真珠の存在意義を揺るがす出来事がきっかけで、彼女は心に深い闇を抱えることになるのです。
実はこの作品は、彼女の謎を解くことが事件の謎を解くことにつながる、という構成になっているので、真珠について詳しく話すと、完全なネタバレになってしまうのです。
そこで今回は、真珠の「心の闇」と「アラタとの交流」について少し紹介しますので、気になる方は本編を楽しんでもらいたいと思います。
真珠の「心の闇」
人は誰しも、多かれ少なかれ「表の顔」と「裏の顔」を使い分けているものです。
ところが真珠は、表裏がはっきりしないのです。
彼女にとってはっきりしているのは、彼女の世界でしか通用しない基準。
つまり、他者を寄せ付けない「心の闇」だけがはっきりしているのです。
物語の所々で彼女が見せる次のような様子に注目してみてください。
- 少女のような笑顔や、守りたくなるようなはかなさ。
- 人を魅惑し、虜にするような妖しさ。
- 心理面での何らかの大きな欠落を思わせる、残酷さや純粋さ。
読者は、これらすべてを同時に併せ持つ真珠に、強烈な違和感を抱くはずです。
真珠の「心の闇」の計り知れなが、読者の心に強く残ります。
アラタとの交流がもたらすもの
アラタとの交流が真珠の何を変え、事件の何が明らかになるのか。
これは、物語の全体を通して、一番気になる大きなポイントです。
しかもこのポイント、なかなか先が読めない、という魅力に溢れたものです。
真珠が求めたものは何だったのか。
真珠はそれをアラタの中に見出すことができるのか。
とても気になります。
アラタの意図は、真珠から被害者の遺体のありかを聞き出すことです。
でもそれには、真珠の過去を探り、素顔を暴くしかない。
その過程で、アラタが何を感じ、どう行動するか。
とても気になります。
そんなアラタの言動が、真珠を「心の闇」から解き放つのか、それとも、違った結果を招くのか。
とても気になります。
こうして読者は、ますます物語に引き込まれていくのです。
最後にもうひとこと
真珠の「心の闇」が徐々に明かされていくにつれて、あなたは嫌でも、「人間の存在意義」について考えさせられることになります。
そのため『夏目アラタの結婚』は、深いテーマを扱った作品として、かなり読みごたえのあるものになっています。
もちろん、心理ドラマ系のエンターテイメントとしても一級品です。
純粋さと残酷さが同居する真珠の「心の闇」に、アラタはどこまで迫ることができるのか。
そして、真珠の「心の闇」はアラタとの交流を通してどう変わっていくのか。
アラタと真珠の関係の、行き着く先に待っているものは何か。
読者を惹きつけてやまない展開にあふれています。
あなたは、一度読み始めたら、きっと最後まで見届けたくなるはずです。
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