どんな時でも自分のペースを崩さないモジャモジャ頭の大学生・久能 整(くのう ととのう)
彼の持ち味は、鋭い観察眼と、客観的な思考力。
彼の楽しみは、自分が決めたカレー日和に、カレーを煮込むこと。
あるカレー日和に突然、警察から任意同行を求められる。
容疑は殺人。
友達もいなく、彼女も作らない、一人暮らしの整。
彼のアリバイを証明するものはいない。
一体どうなる……。
この作品を、ミステリーとして読んではいけません。
この作品に、サスペンスを求めてはいけません。
この作品は、主人公・久能 整(くのう ととのう)のお喋りを楽しむためのものです。
今回は、この異色の作品の魅力を紹介します。
『ミステリと言う勿れ』の魅力の秘密
『ミステリと言う勿れ』の魅力は、主人公の「人物設定」と「セリフ」に尽きます。
この2つが最大のキーポイントです。
主人公・久能 整(くのう ととのう) の魅力
整は、誰もが憧れるような人間性や行動力を持っているから魅力的なのではありません。
彼の魅力は、そのお喋りにあります。
お喋りの内容もさることがなら、彼は、”喋ることに特化した存在” として魅力的なのです。
”喋らないではいられない存在” として魅力的なのです。
つまり、作り物の世界(漫画の世界)でのみ生き生きと存在できる、作られたキャラクターとして魅力的なのです。
もしも整が実在したら、ひたすら喋りまくる人間なんてうざすぎて、周りの人間は、たまったものではありません。
ところが漫画の世界では、整は実に魅力的な存在として輝いているのです。
その秘密は、よく練られた「人物設定」にあります。
ただ単に ”話し好きの男” っていうだけじゃ漫画の世界であっても通用しません。
われわれ読者に、彼のお喋りをずっと聞いていたい、と思わせるようなキャラクターじゃなきゃダメです。
だって整って本当に喋りまくるんですよ。
だから、彼のお喋りに読者が飽きてしまわないようなキャラクター設定が必要です。
ひたすら喋りまくっても違和感のない人物で、周りの人間達も彼の話に思わず耳を傾けてしまうような人物。
この作品ではそんなキャラクターが実現しているのです。
お喋りに特化した存在・整の、お喋りに関する彼の特徴をいくつか挙げてみます。
- 身の程を知っている。
- 礼儀正しい。
- 常に冷静。
- 喜怒哀楽にあまり左右されない。
- 客観的に事実と真実(私見)をしっかり分けて話す。
- これみよがしな態度を取らない。
- 相手をやり込める意図がかけらもない。
これらの条件のおかげで、誰もが彼の話を思わず聞いてしまうのです。
ただひたすら喋ることに特化したキャラクター・久能 整(くのう ととのう)。
実に見事な人物設定です。
セリフの魅力
テンポ良くスムーズに流れる。
これが、この作品のセリフの一番の特徴です。
しかもすべてのセリフが、まるで一つの生き物のように有機的につながっている感覚を覚えます。
そのせいか、セリフの多さが読者の負担になることは全くありません。
しかも、セリフを「読んでいる」というよりは、「聞いている」に近い感覚になるのです。
これがなんとも心地よいのです。
漫画を読んでいて、こんな感覚になったのは初めてです。
とくに整のセリフは、魅力にあふれています。
彼はとにかくよく喋ります。
ただひたすら喋りまくるといった感じです。
普通なら、うんざりするところですが、彼の喋りは一味違うのです。
正論で相手をやり込める意図など一切なく、これ見よがしな態度も、説教臭さもありません。
彼はただ、客観的に分析したことを淡々と話すだけです。
冷静に静かに、事実と真実を話すだけです。
これが実にいいんです。
漫画のセリフを読んで心地よくなるなんて、思いもよりませんでした。
まとめ
『ミステリと言う勿れ』は、題名にもあるとおり、事件の謎解きがメインのミステリではありません。
ただただ、久能 整が喋りまくる話です。
あえて言えば、解かれるのは「事件の謎」と言うよりは、「人間の謎」。
それを解くのが、久能 整とも言えます。
でもやっぱり、久能 整がただただ喋りまくる話です。
普通だったら飽き飽きした作品になるところですが、読者を飽きさせない最高に面白い唯一無二の作品になっているのです。
その秘密が、整の「人物設定」の見事さと、「セリフ」の魅力です。
さらに言えば、整のお喋りがいつの間にか、「事件」も「人の悩み」も解きほぐしてしまうという構成の見事さです。
『ミステリと言う勿れ』は、まぎれもない傑作です。
すべての方におすすめします。
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