法で裁けない屑に制裁を下す、復讐代行人を描いたシリーズ『善悪の屑』の第2部です。
凶悪犯罪の被害者や遺族が無念を晴らすために訪れる場所、「カモメ古書店」。
そこで彼らの依頼を受けるのは、復讐代行人という裏の顔を持つ、店主のカモと相方のトラ。
二人も犯罪被害者だった。
この作品を深みのあるものにしているのは、カモの人物設定です。
このブレないキャラクターのおかげで、この物語をただの復讐劇にせず、深いテーマを抱えた問題作にしています。
今回は、主人公・カモの魅力を紹介します。
『外道の歌』の魅力は、カモの人物設定が鍵を握っている
カモの人物設定の中で重要なポイントは、カモ自身も犯罪被害者であるという事実です。
この事実をベースにして、実にリアルな人物設定がされています。
カモが復讐代行人を始めた理由、復讐のやり方、そして、復習することに対する覚悟などを通して、カモという人物がリアルに浮かび上がってきます。
カモの人物像
カモの人物像でまず押さえて置かなければならない点は、彼は、正義の味方ではないということです。
本人もそんなことは微塵も考えていませんし、そもそも彼は、復讐の正当性を主張したりしません。
彼は、やっちゃいけないことをしているという自覚を明確に持っています。
復讐の連鎖で自分が復讐される可能性も覚悟しています。
そして当然、復讐からは何も生まれないことも承知しています。
ではなぜ、彼は復讐代行人になったのか。
彼は過去に、なんの意味もなく妻子を殺されるという体験をした犯罪被害者です。
加害者の罪を許せないまでも、前を向いて人生を歩むことが犯罪被害者の生きる道だということは百も承知のカモでしたが、その道を選ぶには、あまりにも時間が足りませんでした。
しばらくして犯人の目星がついたのです。
これが、生きる屍状態のカモに生きる意味を与えるきっかけになりました。
カモは躊躇なく復讐を遂げたのです。
生きることを選んだカモでしたが、復讐を遂げたカモが生きられる世界は、もはや普通の世間ではありません。
カモは、自ら進んで闇の住人になったのです。
そして、復讐の代行が、彼の生きる道になったのです。
1巻で描かれる、カモの復讐劇のラストシーンで、
「なぜお前がやる? なんのために?」
と叔父から問われたときのカモの答えが、すべてを物語っています。
カモは、自分がもう二度とダークサイドから戻れない人間になったことをしっかり自覚しています。
復讐は、人の道を踏み外した屑にしかできないことだとしっかり自覚しています。
これがカモというキャラクターの人物像です。
こんな人物だからこそ、カモの行動の一つ一つに一貫性が生まれ、納得の読後感が味わえるのです。
まとめ
『外道の歌』は、勧善懲悪の物語でもなければ、復讐の正当性を主張した物語でもありません。
自らダークサイドに落ち、闇の住人となり、屑にしかできないことだと自覚して復讐を代行する、カモという男の生き方を描いた物語です。
こんな人物だからこそ読者はカモを、”肯定も否定もせずにすむキャラクター” として受け入れることができるのです。
これを可能にした人物設定が実に見事です。
単純な復讐物語に飽きている方には、おすすめの作品です。
そうは言っても、読者を選ぶ作品ですので、興味のある方は、『外道の歌』1巻と6巻と10巻をおすすめします。
主人公・カモの人となりがよく理解できると思います。
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